ざわつく編み物界隈① ~転売問題を考える~

編み物界隈で近年よく話題になる「転売問題」。
なぜ材料が手に入りにくくなるのか、その背景と、私たちができる小さな行動について考えてみます。
この投稿は編み物考察シリーズ(全3回)の第1回です。
① 転売問題(この記事)
② 著作権問題
③ コミュニティの摩擦
どの記事から読んでも大丈夫です。気になるところからどうぞ。
「欲しいのに買えない」編み物材料の品薄と転売問題
近年ではニッターさんの間で特定の糸や道具が手に入りにくくなっているという声が増えています。
その背景のひとつとして挙げられるのが、フリマサイトやオンラインマーケットでの転売問題です。
分かりやすい例としては、100均の棚から毛糸が消え、元値の数倍で取引されているケース。
また、人気ブランドの糸や限定カラーが即座に売り切れ、転売市場で元の価格の何倍もの値段で販売される状況も日常化しています。
初心者さんにとっては「必要な道具を適正価格で手に入れる」という最初のステップが難しくなり、長く編み物を楽しんできた方にとっても、どこか大切な場所を踏み荒らされたようなざわつきを感じることがあるかもしれません。
SNSでもこの問題に関する声が多く見られます。
以下のブログでは、100均毛糸の転売が引き起こす困りごとが率直に語られています。
100均の毛糸を転売する人が落ちる地獄がありますように - 垣根の上から
この1年の休職期間の中で新しく手を出したもののひとつに編み物がある. たまたま実家にかぎ針と毛糸があったので手を出したのだが,頭を使わずひたすら同じ動作を繰り返すだけなのでCPUが激よわの今の私にはぴったりの時間つぶしになった. 編むという行為自体が目的なので,使わないマフラー使わないバッグ,使わない小物入れが生産されては部屋の隅に積まれて行っている. 材料はダイソーなどの100均ですべて揃うし,YouTubeに編み方動画が大量にあるので,本を買ったり教室に行ったりしなくても,まあまあ見られるものが出来上がる. 私のような無収入の人間にも大変良い趣味である. ところで私は最近まで知らなかったの…
また、編み物材料を扱う「なないろ毛糸」さんの投稿では、転売品の品質管理の問題や、メーカー保証が受けられないリスクについて詳しく説明されています。
毛糸の転売がもたらす問題と、正規ルートでの購入の大切さ
おはようございます、細野カレンです。いつもお読みいただき、ありがとうございます。 最近、Z世代を中心に編み物ブームが広がっています。SNSには、シンプルな編み方で作られた帽子やマフラー、カジュアルな雰囲気の作品が並び、手を動かす楽しさが広がっているのを感じます。ものづくりの魅力が、多くの人に届くのは喜ばしいことですね。 しかし、その一方で、気になる動きもあります。 毛糸の需要が高まる中、転売目的で商品を買い占めたり、不正なルートで仕入れた毛糸が市場に出回るケースが増えています。これにより、本来の愛好家が適切な価格で毛糸を購入しづらくなり、メーカーや正規販売店にも影響が及んでいます。 転売品には、品質管理の問題が伴います。例えば、適切
では、なぜこのような状況が起きているのでしょうか。
次に、編み物界隈で転売問題が広がった背景を見ていきます。
編み物材料の品薄、その背景にあるもの
編み物材料の品薄や転売問題が広がった背景には、いくつかの要因が重なっています。
ここでは、その代表的な
- 編み物人口の急増
- SNSによる需要の集中
- 日本的な均一性の文化
の3つを取り上げてみます。
1.編み物人口の急増
近年、編み物人口はゆるやかに増えていましたが、コロナ禍をきっかけにその流れが一気に加速したように感じます。
家の中で楽しめる趣味として編み物を始める人、しばらく離れていたけれど再開した人が増え、材料の需要が大きく伸びました。
さらに、SNSや動画配信の普及によって、編み物の魅力や作品例がこれまで以上に広く届くようになりました。
「こんな作品が作れるんだ」「この糸かわいい!」という気づきが増え、自然と編み物を始める人が増えたのだと思います。
私自身も、なんとなく「最近ニッターさん増えてるな…」と肌で感じていました。
そんな中、テレビで“毛糸の品薄”が取り上げられたのを見て、「これはさらに拍車がかかるのでは?」と直感したのを覚えています。
後日、100均の毛糸コーナーを覗くと棚がほぼ空っぽで、「ああ、やっぱり…」という気持ちになりました。
人は“ない”と分かると余計に欲しくなるもの。
こうした心理も、需要の高まりに拍車をかけていたのかもしれません。
2.SNSによる需要の集中
SNSでは、具体的な糸や道具が紹介されることが多く、「この糸で編むと絶対かわいい」「この道具が本当に使いやすい」といった投稿が瞬間的に注目を集めます。
作品例や動画が視覚的に分かりやすいため、「同じものを作ってみたい」「この糸を使ってみたい」という気持ちが一気に広がり、特定の商品に需要が集中しやすくなります。
その結果、店頭やオンラインショップで売り切れが続き、材料が手に入りにくい状況が生まれやすくなってしまいます。
こうした“人気の一点集中”は、転売市場に流れやすい環境をつくる一因にもなっているのかもしれません。
3.日本的な均一性の文化
日本には、ものづくりにおいて「均一性」を大切にする文化傾向があります。
精密さや一貫性を重視し、誰が買っても同じ品質のものが手に入る安心感は、日本の産業が世界から信頼される理由のひとつでもあります。
ただ、この“均一であることへの安心感”が、ときに「みんなが持っているもの=正解」という意識につながることがあります。
話題になったアイテムに人気が集中しやすいのも、こうした文化的背景が影響しているのかもしれません。
この傾向は編み物界隈でも見られ、「今この糸が人気です」と紹介されると、同じものを求める動きが一気に広がります。
結果として、道具や材料の供給が追いつかず、転売市場に流れやすい状況が生まれてしまうこともあります。
「個性を出したい」と思いながらも、「みんなと同じものを選ぶと安心」という気持ちが働く。
そんな日本的な感覚が、購買行動に影響しているのかもしれませんね。
「転売問題」は編み物界隈で起きている課題のひとつです。
このシリーズでは、ほかにも
② 著作権問題
③ コミュニティの摩擦
についても考察しています。
転売問題の解決糸はしをさぐる
問題の背景をもとに、解決に向けて具体的に何ができるのか考えてみました。
1. 転売品を購入しない
まず、もっとも効果があるのは「転売品を購入しない」ことです。
背景の「編み物人口の急増」で需要が高まっているからこそ、転売品を買わないという選択が市場を落ち着かせる大きな力になります。
需要がなくなれば転売市場は自然と縮小し、結果としてメーカーや販売店を支え、適正な価格での流通につながります。
価格が異常に高いものや、販売元が不明確な商品には注意が必要です。
たとえば、100均の商品が500円で売られているケースは分かりやすい例ですね。
毛糸は重量や長さによってコスパが大きく変わるので、高額転売品は意外と割に合わないこともあります。
その価格なら、手芸店や毛糸専門店でより良いものが買えることも多いです。
また、公式ショップや正規販売店の多くはオンラインショップを持っており、お得なまとめ買いや予約購入ができる場合もあります。
SNSのコミュニティでは、信頼できる販売店や正規品の購入方法が共有されていることもあるので、情報収集に役立ちます。
2. 視野を広げて需要を分散させる
SNSで人気が一気に集中しやすい状況があるからこそ、「本当に必要かな?」と一度立ち止まるだけで視野がぐっと広がります。
この小さな"間"が需要の偏りをやわらげる大きな力になります。
私自身、紹介されていた作品に一目ぼれして、同じ糸と道具を探し回ったことがありました。
売り切れが続き、高額な転売品が表示された瞬間、思わずポチりそうになったのを覚えています。
その頃には、何のために探しているのかさえ分からなくなっていました。
検索すればするほど、同じ傾向の情報ばかりが表示される“フィルターバブル”に自分がすっぽり包まれていたのだと思います。
でも、ふと冷静になれた瞬間がありました。
「これ、実は私にはそこまで必要ないかも?」
「持っている道具で代用できるよね?」
そう思えたら、最終的には全く違う素材で似たデザインのものを選ぶことに。
自分の興味関心の外側に、もっと最適な素材や道具があることに気づけました。
トレンドに流されすぎず、自分のペースで選ぶこと。
それが結果的に需要の分散につながり、転売市場への依存を減らすことにもつながるのだと思います。
また、転売に頼らない別のアクションとして、メーカーや販売店に問い合わせてみるのも一つの方法です。
声を届けることで、生産や流通の調整がしやすくなるかもしれませんし、限定品を定番化してほしいという要望が届けば、供給が安定して転売の動きが減る可能性もあります。
継続的に購入できる環境づくりにもつながりそうですね。
3.「好き」を大切にして個性を楽しむ
日本的な“みんなと同じものを選ぶ安心感”があるからこそ、自分の「好き」を信じて選ぶことが、結果的に需要の分散につながります。
せっかくの趣味だから、自分の感覚を大切にして楽しむことが何よりだと思うのです。
私自身、自分の感覚に自信が持てなくて、周囲に意見を求めることが多々ありました。
でも結局は、自分が好きなように、やってみたいように編んでいます。
一人一人価値観が違うのは当たり前で、自分の「好き」に自信を持つことで、素材や道具選びの幅がぐっと広がることに気づきました。
紹介されている作品に一目ぼれして「同じの作りたい!」と思う気持ち、
「この道具が欲しい!」という気持ち、私もよく分かります。
実際に購入して、同じように作ったこともあります。
特に編み物を始めたばかりの方にとっては、毛糸の選び方が分からなかったり、別の色でもかわいくなるのか不安だったりして、同じ糸や道具を選びたくなるのは自然なことだと思います。
だからこそ、自分の価値観や目線で選ぶ習慣を少しずつ育てていくことが、コミュニティ全体の過剰な需要集中をやわらげることにもつながるのではないでしょうか。
「好き」を大切にすることが、結果的に健全な流通を守る力にもなるのだと思います。
おわりにーそっとひとこと
いかがでしたでしょうか。
今回は、編み物界隈の3つの問題点のうちのひとつ、転売問題について考察してみました。
皆さんはどのように感じられたでしょうか。
まったく違う視点や考え方をお持ちの方も、きっとたくさんいらっしゃると思います。
それぞれのスタンスで、転売問題の解決に向けた小さな“糸はし”が見つかるきっかけになっていたら嬉しいです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
それでは、また次の投稿で。
▼ 編み物考察シリーズのつづき

ざわつく編み物界隈② ~著作権問題を考える~ | わたしあむわ
編み物界隈が抱える課題をひも解きながら、解決の糸はしをつなげていくシリーズ。
今回は著作権について考えてみます。

ざわつく編み物界隈③ ~コミュニティ摩擦を考える~ | わたしあむわ
編み物界隈が抱える課題をひも解きながら、解決の糸はしをつなげていくシリーズの三回目。最終回はコミュニティ摩擦をテーマに考えます。